家族脱退宣言とその後(2) 毒親と戦争

1つ前の「家族脱退宣言とその後」の続編です。

就職→入寮→独立&一人暮らし…と、実家脱出に成功した私でしたが、物理的に離れてからも母は追ってくる。

連絡なしに突然、荷物が送られてきて、帰宅した私が宅急便の不在票眺めていると「なんで荷物を受け取ったら、すぐに電話してこないのー!あんたは人間のクズよ、クズ」と怒鳴る電話がかかってくる。

いや、まだ受け取ってないし、荷物が来るって知らないし……。

私がまだ寝ている早朝に突然「あんたは結婚してないし子供も産んでないから乳がんになるわ!絶対なるわよ!」と、謎の不幸宣告電話。

め、目覚めが悪すぎる…。

私の仕事が載っている雑誌を見て、わざわざ「あんな重い本、誰が読むの?内容もくだらない」と嫌味を言ったり、突然やってきて夕飯の準備がないと怒りだすなど、

距離をとって冷静に眺めれば眺めるほど、母の私に対する言動は奇怪というかホラー。

一方で、私が重い病気になって家事をするのが辛くなり「2、3日泊めて」と実家に戻れば「なんでこんなになったのよ。どうするのよ!あんたがいるからいろいろ片付かないじゃない」と心配されるどころか責められる。

あーあ、お母さんが病気の時は、一睡もしないで病院に迎えに行くのが当たり前なのに、たまに逆の立場になったらこれかい。

娘は母の奴隷ですか?

と、私の気持ちはどんどん母から離れていき、もう縁を切りたい…と思うように。

しかし、周りはそれを許さない。

なぜなら、母のこうした態度は私だけに向けられていて、2人きりの時のみ発動。彼女は「対 一人娘」以外の場所では、面倒見が良くて親切な「いい人」なのです。

むしろ父や親戚、近所の人には、仕事が忙しい娘を心配しつつ活躍を自慢していたそうで、周囲の目には「娘思いなのに可哀想なお母さん」と写っていたらしく……。

これって、よくある陰湿なイジメの構図ですよね?

なので、まずは「お母さんと仲良くしろ」と繰り返すばかりの父に事実関係を説明。

なかなか信じないので、母からのメールも転送してデータで説明。いったい、何のプレゼンだよ!

数年かけて、父はようやく状況を理解しましたが、父は父で、エキセントリックな母と平穏に暮らすための我が身の保身で精一杯。状況改善力なし。

結局、その後も書き切れないほどいろいろありまして、私は悲しみも怒りも通り越して心底うんざり。

「家族はいる方がいいけれど、あの人たちと家族でいるメリットは何?」と考え始めた自分に、あーもう完全に終わってると、笑いがこみあげてきました。

そこで、父に「私、家族やめるわ」と家族脱退宣言したところ、慌てた父が重過ぎる腰を上げてパーソナリティ障害の治療で有名な先生に相談。

「娘さんの言ってることが100%正しい。子供は親を選べないけど、あなたは自分の意思で奥さんと結婚して、今まで結婚生活を続けてきた。奥さんの面倒はあなたが責任を持ってみて、娘さんをお母さんから解放してやりなさい。そして一生、盾になって娘さんを守るのがあなたの役目です」と、諭されたらしいのです。

でしょ!?先生。そうでしょ! やっとこさ救世主、現る。

私がさんざん頼んでも動かなかったくせに、権威に従順な父にはこれが効果てきめん。

いま父は、この先生のアドバイスをきっちり実行してくれています。

さらに父には、母の言うことを真に受けて「お母さんを気遣いなさい」と忠告してくる親戚一同に、うちの実情を説明する手紙を出してもらいました。

親戚たちはかなり驚いたようですが、彼らにとっての母はずっと「いい人」ですから、何も聞いていない体で、今も母と変わらぬお付き合いをしてくれている様子。

もちろん私は責められなくなりました。

私の母は極端な例かと思っていたら、似たようなことをするどころか、ほんとクレイジーだなと思う言動を子供に取る母親、父親はけっこういるんですね。

子供たち、みんなよく頑張って生きてきた。過酷なサバイバルだったね、と思います。

で、なんで「毒親」と呼ばれる人たちが、子供にとって害になる行動をとってしまうかというと、彼らも子供時代に恐怖感や罪悪感で支配されて育ってきて、それ以外の方法を知らないんだと思うのです。

うちの母も親には絶対服従だったらしいですし、戦争の影――つまり全体主義と軍国主義――が家庭の外にも内にも色濃く残っていた時代ですから「個性尊重」なんて夢のまた夢。

親や教師や軍人などの「自分より立場が偉くて権力を持っている人」に服従して生き延びるやり方が、日本ではごく当たり前だったのでしょう。

そして、それは高度経済成長期の企業戦士と、「銃後の支え」なんつって便利に持ち上げられていた良妻賢母による「日本の家族文化」に引き継がれていき、機能不全家庭も祖父母世代から親世代へとバトンタッチ。

ところが、みんなで足並みをそろえていれば一生安泰だった時代が終わって、「個性尊重・多様性」が叫ばれるようになると、親や先生などの「立場が上の人」が問答無用に子供を従わせるやり方が合わなくなり、いま「毒親認定」された親たちが一気にやり玉に挙げられているのだと思います。

というわけで、実は親たちも「時代の被害者」。

親に従い、社会の要請に従い「言われた通りにしてきたのに何でー!」と叫びたいのは、子供に嫌われ、すっかり加害者扱いされている毒親の方かもしれないとも思うのです。

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