気づき② ――お互い様

さて、一つ前から続く話。

なんで私が実家に帰属意識を持っていなかったかというと、もちろん物質的には両親に依存しながら、精神的にはあまり二人を信用していなかったようなのです。

人聞きの悪い話ですが(笑)。

 

何度か書いていますが、うちの母は娘である私に対してだけ暴君で、彼女の言う通りに行動しないと「あんたなんか死んでしまえばいい」とか「あんたさえいなければ」などと、捨て台詞を吐き、ときに手も出る。

もともと「ピリピリしやすいお母さん」だったのが、私の中学入学ぐらいから激化して、私の実家生活は、刑務所の囚人のようになりました。

いまでこそ、ほいほいとライブやフェスに行けるけど、当時はそんなの絶対無理よ。食後30分以内にお皿を洗わないと蹴飛ばされるぐらいだし、見るもの聞くもの、いちいち母が干渉。

親戚や他所の人の前では「娘がよくお手伝いしてくれるの」などと娘自慢している母が、家に帰って二人きりになると、陰湿な”いじめっ子”に変貌するところも、人間のどうしようもない弱さを見るようで、逃げられる場所があるなら逃げたかったです。

で、父に助けを求めるも、父はいつもテレビから目を離さずに「ん? かおるが悪いんだろう?」でスルー。ザ・日本のことなかれ主義。

母は父や他人の前では、暴言など吐かず、別人のように振舞うため、鈍感な父が気づかなかったのは仕方なかったといえば仕方ないけど、私の心情は「母がああで、父もこんなかぁ……」。

その両親自体も「もしかして怒鳴りあうのが好きなの?」と疑問に思うほどよく罵りあっていて、その様子を私は「両者とも相手の意見に耳を傾ける気が全くない。なんでこの人たち、結婚したんだろう?」と、とても悲しく、半ば呆れて聞いていました。

そんなわけで、けっこう早い段階で、私は両親に失望して、見限ってしまったようなのです。

「大学まで出たいから、住まいと親の経済力は必要だけど、この人たちはお手本にはならない。本音で話せる相手でもないなあ」と。

もちろん、そんなことは言わないけど、思ってることは、だいたい伝わりますよね。

クレイジーなほどの完璧主義で、人から「立派」と言われるために、倒れるほど頑張っていた母は、冷ややかに見ている私を、マジで可愛くねぇ娘だなと思っていたでしょう。

母は3000人に1人、受かるかどうかという某難関国家資格を取ったところで、想定外に私を妊娠。

けっこう大変なお産を経験して、キャリアも棒に振ったことを、のちのちまでぼやいていましたから、それでもって娘が期待はずれだったら、そりゃあガッカリよね。

暴言がどれだけ子供を傷つけるか、という点にはまるで意識が及ばず、感情面は幼い女の子みたいな母が、よそよそしくて寄り添ってこない娘を「憎たらしい」と思ったであろうことは、容易に想像できます。

 

その後、私と両親の間には、もうあの世に帰りたいと神様に訴えたくなる出来事がたくさんあり、近年母が「(私には)帰ってきてほしくない」と言い出して、それを機に本格的な疎遠になりました。

父に言わせると、それは「思い通りにならない娘への仕返し」なんだそうです。

それを聞いた時に「仕返しですか!?」と、本当にガックリ疲れ、ヒタヒタと水嵩を増す悲しみにブクブク沈みましたが、よく考えたら、あんたも早々と見限ってたじゃん!

10歳過ぎから「この人たちは反面教師」と、思ってたでしょ。

だから、もともと帰属意識がほとんどなかったじゃん。

そういえば、難事件捜査にも協力しているという台湾のナンバー1霊能者にも「あなたの両親は、あなたの親でいるだけの力が無い」と、言われたよね?

それをこの間、特急の車窓から流れゆく故郷の田んぼを見ていて思い出したのです。

 

なーんだ。じゃあ、これでいいんだ。

母が自分から離れていってくれたことも、「良いご家庭」の体を守りたがっていた父が夫婦だけの老後を受け入れたことも、私が自由になったことも。

もう、喪失感や罪悪感は感じなくていいし、HOMEのエナジーをチャージしたくなったら、勝手にあの野山に遊びに行けばいい。

私の魂の実家は、開発されない限り、あの土地にあって、そのパワーはうちの親子関係がどうなろうと関係ないくらい揺るぎない。

そう気づいたのでした。

そして、うちと同じような事態は、けっこう多くの家庭で起きているのではないかと。

両親は育ってきた家庭や高度経済成長期の社会で「当たり前」だったことを盲目的に信じた結果、ああなった訳ですから、これは親を責めて解決する問題ではなく、むしろ「これはおかしい」と気づいた子供の側から負の連鎖を断ち切って、個と家族の在り方を改めていくのが大切だと思うのです。

今、両親には物質的に不自由なく育ててくれたこと、いい教育を与えてくれたこと、自分が本当に欲する生き方や関係性について、早くから深く考えさせてくれたことを感謝しています。

すごい、取ってつけたようだけど本当にね。ありがとう。

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